しかし、お客さまにその良さがなかなかうまく伝わりません。
何かいい方法はないでしょうか。
(60歳・工務店・和歌山)
確かに、高断熱高気密住宅はコストが高くなりますから売りにくいですね。
売れないから扱わないという選択肢もありますが、国の施策で「やりましょう」となってきているので、いずれにしても考えていく必要があります。
「暑さにも寒さにも対応」が大事
日本の中でも、特に静岡から西の太平洋側、関西・四国・九州あたりは比較的温暖なエリアです。
その昔、20年前のH11基準だとIV地域・V地域とされていましたね。
暖かいから高断熱高気密は関係ない、といった風潮が長らく続いてきました。
今でもその頃の意識で行われている工務店さんもあれば、御社のように高断熱高気密に取り組まれている工務店さんもあります。
特に長期優良住宅を積極的に進めている工務店さんでは、当たり前となっています。
暖かいとはいえ、実は太平洋側でも、冬場はおおむね気温が5度以下になります。
夏場は、最近では35度超えも珍しくなく、異常な暑さの日もあります。
そこで、高断熱高気密は「夏の暑さにも、冬の寒さにも対応できますよ」というのがまず重要です。
「省エネ」よりも「家計にやさしい」と表現を
特に太平洋側は日照時間や日射量も多く、比較的条件が良いので、太陽光発電を設置すれば限りなくゼロエネルギー住宅(ZEH)になっていくと思います。
お客さまの初期投資はどうしてもかかってしまいますが、ざっと10年前後で元が取れると言われています。(載せるパネルの面積にもよるので一概には言えませんが)
ただし、太陽光発電を利用するならば、高断熱高気密とセットにする必要があります。
つまり「高断熱高気密住宅は、エネルギーをたくさん使わない住宅」ですね。
ただ、お客さまは「省エネ」という言葉は知っていても、あまりピンときません。
そこで、表現としては
夏は「エアコンをがんがん使わなくても済む」家。
冬は「暖房代がかからない」家。
その方が、住む人にとって「健康にもいいし、家計にもやさしいですよ」。
さらに、冬は「ヒートショックからもあなたを守りますよ」。
よく使われる言い回しですが、このような売り方をするのが一番良いのではないかと考えています。
光熱費の違いを見せる
また、数字で分かりやすく見せる方法もあります。
太陽光発電と高断熱高気密の組み合わせ(ZEHまたはそれに近い状態)で考えてみましょう。
施主さまから、新築に入居する前の光熱費(電気代・ガス代)の明細書を一年分いただきます。
同様に、新居での明細書も一年分いただきます。これらはコピーでかまいません。
そして、双方を比較して表を作り、新しいお客さまに見せる資料とします。
建物の条件は違いますが、高断熱高気密であれば多くの場合、新居のほうが光熱費は安くなると思います。
これでかなり、省エネを数字で見せることができるはずです。
現場見学会での見せ方
現場見学会で、高断熱高気密を伝えるトークをご紹介します。
暑さ・寒さに気づかせる
冬であれば、16時~17時になると、日が落ちて寒くなってきます。
お客さまが帰られる時に、外に出ると、「今日は寒いね」という声がだいたい出ると思います。
そこですぐに、「そうですよね。実はいま、エアコン1台だけで暖めていたんですよ」と声をかけます。
するとお客さまは「高断熱高気密って、そういうことなんだ…」と気づきます。
夏の見学会でも同じです。
外に出た時に、お客さまが「暑いね」となります。
そこで、「中はエアコン1台なんですよ。でも快適だったでしょう?」と伝えます。
一番重要なのは、「タイミングを逃さず、すぐ伝える」ことです。
多くの場合、帰り際は「どうもありがとうございました~」と見送ってしまいますよね。
また、「寒いね」と言われたら、「寒いですよね」と同調して会話が終わってしまうこともあります。
最後まで気を抜かず、それでいてさりげなく、自社のつくる家の良さを伝えてください。
お客さまが体感できるタイミングで、声をかけるのがポイントです。
温度を見せる
高断熱高気密住宅は、基本的には部屋ごとの温度差は少なくなっています。
1階と2階で温度差があまりないとされていますが、やはり暖かい空気は上に行きやすいものです。
ですから、表現として、「均一」という言い方はしない方がいいように思います。
それでも「ある程度安定している」のを見せるためによく行うのが、温度計を各部屋に置いて温度を見せる方法。
ご案内しながら、「温度、変わりませんよね」と伝えます。
注意したいのは、それぞれの温度計自体の誤差がないようにしておくことです。
デジタルでもぴったり合わない場合があるので気をつけてください。
雪の日はチャンス
たまに関西でも雪が降ることがありますね。
もし積もった時は、ぜひ写真を撮ってください。
撮るのは、屋根に積もった雪の写真です。
自社の高断熱高気密住宅の屋根が写り込むように、その周辺の屋根も入れて撮ります。
高断熱高気密住宅は、屋根断熱でも天井断熱でも、屋根の雪がなかなか溶けません。
これは室内の熱が逃げにくいからです。
昔ながらの断熱性能の低い家は、熱がどんどん逃げていくので、屋根の雪はすぐに溶けます。
1日目、2日目と、屋根の様子を写真に収めていきます。
それをお客さまに見せるツールにするのです。
体感してもらうのがいちばんです
高断熱高気密住宅の良さは、いくら口頭で伝えても、なかなか伝わりづらいものです。
目で見てもらう、肌で感じてもらう、ことを意識的に行い、良さを伝えていきましょう。
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