工務店経営のヒントが届く! 無料メルマガはこちら >

【第73回】大工が「引退したい」と言っている ~職人不足の現状

Q大工の高齢化が気になっています。
弊社には常用の大工が3人いるので、今のところ仕事はできています。
でも3人とも70代前半で、「体がきつい。そろそろ辞めたい」と言います。
なんとか頑張ってもらっていますが、それもあと5年くらいかと思います。
その後どうするか、正直よく分かりません。なんとかなると思っているのですが…。
(工務店・年商2億円・46歳・新潟)

Aなんとかなると思いたい、お気持ちは分かります。
しかし残念ですが、なんともならなくなりつつあります。

周りを見回してみてください。
大工さんだけでなく、左官屋さん、クロス屋さん、水道屋さんなど、多くの職人業種が高齢化しています。そして間もなく引退を迎えます。

いよいよ職人不足が現実的になってきました。

職人不足については、第72回でも触れましたが、もう少し詳しく見ていきます。

現場の管理

平成30年度の新設住宅着工戸数はどうだったのか?

新設住宅着工戸数は、昨年度(平成30年度)は95.3万戸(前年度比0.7%増)で、前年並みでした。

内訳は
・一戸建て住宅が43.3万戸(3.0%増)
 ※ 一戸建てのうち、持家28.8万戸(2.0%増)、分譲戸建14.5万戸(5.1%増)
・マンションが12万戸(10.5%増)
・貸家は39万戸(4.9%減)
でした。

【出典】建築着工統計調査報告 平成30年度計(PDF:614KB) -国土交通省

新設住宅着工戸数は、ここ数年堅調でした。
しかし、新築を建てる世代は確実に減っており、新築市場は縮小していきます

国勢調査で大工の減少が明らかに

問題は、大工さんや職人さんの減少です。

大工人数の推移

大工人数の推移-ジクージン

このグラフは、5年ごとに行われる国勢調査のデータを基に弊社が作成した「大工人数の推移」です(折れ線は2000年を100としたときの推移)。

2000年(平成12年)には、全国に約65万人の大工さんがいました。

それが15年後、2015年(平成27年)には約35万人まで減少。
なんと45%減です。半減と言ってもいいくらいです。

一方、2000年の新設住宅着工戸数は約121万戸、2015年は約92万戸でした。
こちらの減少率は24%です。
このことから、新築需要の落ち込み以上に、大工さんが急激に減っているのが分かります。

大工の年齢内訳

さらに2015年の大工さんの年齢別内訳を作成してみました。

大工年齢の内訳-ジクージン

これを見ると、2015年10月時点で既に、約4割の大工さんが60歳以上だったのです。
それでもこの時は、団塊の世代(昭和22年~24年生まれ)の多くは現役でした。

しかし、それから4年経過した2019年の今、昭和24年生まれの方が70歳になります。
つまりこの円グラフの「60歳代」の約半分が引退年齢にさしかかってきていると考えられます。

あと5年もすると、新築でもリフォームでも職人不足が深刻化することは明らかです

大工の減少について…野村総研のレポート

野村総合研究所(NRI)の2018/06/13付レポートには、2030年までの大工の人数について以下のようなコメントがあります(一部省略)。

・大工の人数は、2030年には21万人にまで減少すると見込まれる。
・需要(着工戸数)の減少を、供給(大工)の減少が上回る。
・これまで大工1人当たりの新設住宅着工戸数は年間約2戸前後だったが、大工の生産性を1.4倍まで引き上げないと、60万戸の需要でも供給できなくなる可能性がある。

【出典】2030年度の新設住宅着工戸数は60万戸、大工の人数は21万人に減少 2018/06/13 -(株)野村総合研究所

工務店の近未来は?

これらの状況は、大工さんだけの問題ではありません。
家づくりに関わる職人さん全般に言えることです。

そこで、3~5年後の近未来を想像してみましょう。

■ 大工さんやその他の職人さん不足で、仕事がとれても現場が動かなくなる
売上減少または売上が不安定

■ 当然、職人さんのコストは上昇する(職人さんの取り合い?)
外注費が上昇

■ しかし見積には反映できない
→ ますます粗利減少

自前の大工さんがいる工務店が強くなる
→ 自前の大工さんがいない工務店は競争で勝てない

体力消耗戦で、職人さんのいない工務店から順番に市場退場へ?

これに資材や設備の値上げが追い打ちをかけてきます。
なかなか厳しい状況が予想されます。

ではどうしたらよいのかを考えていきましょう。
第74回に続きます。

現場の管理

この記事に関するご質問・ご感想・お問い合わせは【工務店経営の専門家・ジクージン】まで、お気軽にお送りください。


いい家を建て、利益も残す工務店300の方法
読者会員登録


メール会員
読者会員さまに、工務店経営に役立つ情報をメールでお知らせします。

セミナーや勉強会・交流会のご案内も優先的に届きます。
オリジナル資料のダウンロードもできます。
時々おまけもついてます。

年会費は無料です。登録しておきませんか?


ABOUT US
間瀬 隆司
工務店経営の専門家。集客・営業、人材教育・組織づくり、経営計画、資金繰りを含めた「全ての面倒をみる」スタイルのコンサルティングで、工務店さんを支え続けて30年。工務店のほぼすべてを知り尽くしており、駆け込み寺的な役割を果たしています。神奈川県横浜市在住。海を見るとホッとします。
→詳しいプロフィールはこちら