
私が社長になって丸10年です。父は会長職ですが今は悠々自適です。
現在は年間30棟建てていますが、先々が不安です。
この先、勝ち残るにはどうすれば良いでしょうか。
(工務店経営・45歳・東京)
工務店として勝ち残るにはどうすればいいのか。
これは、皆さんが一番気にされていることだと思います。

私が考えている、「工務店が勝ち残る条件」は3つあります。
2. 現場で利益が出る
3. 人材育成の仕組みがある
この3つは、工務店さんに訪問したときに必ずさせていただくお話です。
1つずつご紹介します。
1. 営業の仕組みができている
これは、勝ち残るための絶対条件です。
「営業の仕組み」とは、すごく平たく言えば、お客さまの方からこちらに来てくれる状態です。
お客さまが、「ぜひ御社で建ててほしい」と言ってくれる。
そのような状態が最も良いと思います。
紹介受注7割を目指す
基本は「紹介受注」だと考えています。
私の感覚では、紹介受注率7割が理想です。
残りの3割は、ホームページや地域雑誌からの集客で受注することを想定しています。
このくらいのバランスがちょうど良いと感じます。
例えば御社の場合、年間30棟のうち20棟が紹介、ということになります。
あとの10棟を、集客し営業して受注する、そんなイメージです。
紹介100%は、やめておく
では、「紹介受注100%」だったら、もっと良いのか。
と聞かれれば、私はあまりおすすめしていません。
紹介100%なら、全部お客さまの方から来てくれるわけです。確かに楽です。
しかし、営業の工夫をしなくなります。
5年~10年くらいは良いかもしれませんが、どこかで必ず息切れするときがやって来ます。
ふと周りを見ると、他の工務店は全く違うスタイルで営業している。
時代についていけず、自分だけが取り残されていることに気づく。
そのうちお客さまの紹介もなくなり、「まずい」と思って営業を始めても、時すでに遅し、となります。
工務店における「創造」と「維持」
マーケティングの基本で言えば、かの有名な経営の神様・ドラッカーは、経営は「顧客の創造と維持」であると述べています。
工務店の場合、「創造」は、自分でお客さまを見つけてくることです。
「維持」とは、通常はリピート注文を指します。
しかし、住宅の場合、ほぼリピート注文はありません。
1人のお客さまが一度建てたら、少なくとも30年は建てないからです。
その代わり、紹介受注があるので、私はそれを「維持」と考えています。
なぜ「顧客の創造と維持」が必要なのか
例えば、ラーメン屋さんなどの飲食店を考えていただければ分かりやすいと思います。
飲食店には必ず、その店が好きでいつも通ってくれる、常連のお客さまがいます。
店長さんに聞くと、「実は、続けて通ってくれるお客さまは7~8割。およそ1年で2~3割のお客さまが来なくなり、代わりに新しいお客さまが入ってくる」といいます。
翌年になると、またその中の2~3割が来なくなり、新しいお客さまが入ってきます。
中には1年も経たないうちに来なくなる人もいれば、10年通っていたのに突然来なくなる人もいます。
いつも常連さんで賑わっているように見えるラーメン屋さんでも、「維持」だけでは成り立たないのです。
紹介と新規をバランスよく保つ
「顧客の創造と維持」とは、顧客を常に新しく作りだすことも考えつつ、昔からのお客さまも大事にする、という考え方です。
どちらかに偏りすぎず、バランスよく保っていくことが大切です。
そう考えると、工務店さんでは全体の6~7割が紹介、残りの3~4割が新規。
紹介をいただきながら、お客さまを自分で見つけてきて、営業活動もする。
そんな感じが良いのではないでしょうか。
2. 現場で利益が出る
これは、簡単にいえば「社内でできる部分」を増やしましょう、というご提案です。
通常、粗利益は 「売上」-「原価(外注費+材料費)」 ですね。
さらに利益をあげるために、この原価を見直します。
工務店さんの利益が限られているのは、原価の中の「外注費」が多いからです。
外注費、つまり社外に支払っているお金を社内で賄えば、利益が残ります。
多能工がポイント
具体的には、職人さんを自社で何人か抱えることをおすすめしています。
それは、「多能工であること」がポイントになります。
多能工については、第72回で取り上げていますのでご参照ください。
3. 人材育成の仕組みがある
これは工務店に限らず、会社経営をしているのであれば人材育成は必須です。
工務店さんでは、人材に関しては中途採用でなんとかつないできた現状があります。
中途採用スタッフの今後
中途採用の営業スタッフはあまり活躍してくれない場合が多いのですが、それでもある程度は受注できていました。
今まではマーケットが大きかったからです。
新設住宅着工戸数は、15年前は120万戸ありましたが、2018年は94万戸ほど。
今後もさらに減っていきます。
10年後には65万戸くらいまで減るのではないでしょうか。
つまり、中途採用の営業スタッフにとって、非常に厳しい環境になりつつあるのです。
中途採用については、第51回でも取り上げています。
また、工務店での工事監督経験者は、今は引く手あまたの状態にあります。
特に40歳代は即戦力が期待できます。
ただ、仕事の仕方はどこまでも「自分流」です。
短期的には助かるのですが、会社の将来を考えると不安が残ります。
若手を採用し育成する仕組みを
そこで、今後は、新卒や第二新卒のような若い人を採用することをおすすめします。
若い人たちを育成し、会社に定着させるような仕組みを作っていく。
でなければ、工務店経営は厳しくなると感じます。
新卒採用については、第67回でも取り上げています。
工務店では、新卒の社員を3日ほど、外部の研修に参加させることがあります。
信用金庫などの研修会で、社会人としてのビジネスマナーや接客応対などを学びます。
研修から戻った新入社員は配属先に行き、その部署の先輩に教わりながら仕事をします。
ところが、先輩たちは人を育成した経験がありません。
自分自身も育成されていない。育成の方法も学んでいない。
中途採用が多い工務店さんでは、そんなケースをしばしば見かけます。
それに気づき、会社として人材育成ができる仕組みを考えた社長が勝ち残れる。
そんな時代が来ているのではないでしょうか。
いちばん大事なのは「人」です
営業の仕組みも、現場の利益も、人材育成と密接に関わります。
経営資源「ヒト・モノ・カネ」の中では、「ヒト」が一番大事です。
工務店として勝ち残り、会社組織として動かしたいのであれば、自社で人材を育てることをぜひ考えてみてください。
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