第113回記事の続きです。
前回を踏まえて、経営計画の立て方と経営改善の方法について考えます。
キャッシュフロー分岐点を経営計画に応用する
では、キャッシュフロー分岐点(以下「CF分岐点」と略します)を応用した経営計画の立て方をご紹介します。
経営計画策定のステップ
経営計画の策定では、次のようなステップを踏みます。
【STEP2】仮の数値目標を設定…残したいキャッシュを設定しCF分岐点売上を計算する
【STEP3】売上高、変動費、固定費を検討し、実現可能な目標を設定する
【STEP1】のCF分岐点の計算は、前回ご説明しました。
【STEP2】では【STEP1】のCF分岐点に、残したいキャッシュの金額を加えて計算します。
=(固定費+借入金の元金年間返済分+法人税等-減価償却費 +残したい額)÷ 限界利益率
【STEP3】で、この数値目標を達成するために具体的に何を実施するかを検討します。
CF分岐点で何を考えるか
このCF分岐点の計算式には変動要因が少なくとも3つあります。
それは、
・売上高
・変動費(≒原価)
・固定費(≒販管費)
この3つです。
借入金の元金返済分と支払利息は分かっています。
法人税等は概ね税引前利益の35~40%程度とします。
工務店の経営を改善するには?
経営改善のためには、変動要因をそれぞれ見直していくことが必要になります。
順に見ていきましょう。
売上高を上げる
です。
したがって、売上高を上げるには、
■ 数量を増やす
■ 両方を同時に行う
このどれかを行います。
「単価を増やす」には、見積を従来より上げることになります。
「数量を増やす」は、契約棟数を増やすことです。
いずれも集客や営業手法を見直すことになります。
変動費を下げる
次に変動費の改善(削減)についてです。
外注費は大量発注すれば、数%は下げることができるでしょう。
年間30棟以上であれば、かなり交渉の余地があります。
しかし年間20棟以下の場合は、大きく下げることは難しいかも知れません。
それには他の方法も考え、大転換を検討する時期に来ていると思います。
(これについては長くなりますので別途ご紹介します)
固定費を見直す
最後に、固定費についてです。
固定費で大きなものは人件費と広告宣伝費です。これが売上高に直結しているのです。
売上高では、単価と数量でした。
経費の削減を迫られると、真っ先に固定費の削減に目がいきます。
これは単純に人員の削減とか広告出稿の削減を行うケースが多いのですが、固定費は営業上どうしても必要な経費でもあるのです。
そこで、固定費では「効率」が重要となります。
売上高の数量を増やす、つまり契約棟数を増やすためには、集客をいかに効率的に行うのか、そして出会ったお客さまといかにスピード契約するか、が課題です。
これは「人」によるところが大きい領域です。
例えばホームページの充実、SNSでの情報発信、商品の標準化など、すべての業務に人が関わります。
それは社内スタッフが担当するのか、外注に依頼するか。
それによって、人件費になるのか、広告宣伝費になるかの違いです。
要は費用対効果(かけた費用に対して効果があったかどうか)が重要です。
つまり、効率的かつ効果性があったかどうか、を考えなければなりません。
ネット集客は特に重要
特にWEBマーケティングではこれを繰り返す「PDCA」が肝心です。
その結果、非効率であったり効果が認められないと、確実に人件費と広告宣伝費に跳ね返ってくるのです。
つまり「利益を残す、キャッシュを残す」という視点で見ると、極めて重要なポイントになるのです。
ところが工務店では、この領域の中心に社長がいない状況も散見されます。
「社長の仕事は集客と営業」といっても過言ではありません。
ですから、WEBマーケティングにも社長が積極的に関わっていきたいものです。
工事の効率化も考えたい
人件費に直結することでいえば、着工後の工事の効率化も重要なポイントになります。
これは変動費(≒原価)にも直結するので、監督の能力だけに頼らない、誰がやっても確実な工事が進む仕組みが必要です。
まずはCF分岐点を出して検討を
【STEP3】こそが、経営改善のキモになります。
ここまで、CF分岐点を算出し経営計画まで策定する流れをざっとご説明しました。
ぜひ検討してみてください。
それは、工務店のすべての業務が利益につながっているからです。
その集客は何のために行うのか? 業務のどこにムダが隠れているのか?
自社が本当に改善しなくてはいけない点はどこなのか?
工務店経営の中身を読み解き、経営者としての基本と応用が身につく講座です。
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