この現場をお借りして現場見学会を行う予定です。
何か注意することはありますか?
(工務店・40歳・神奈川)
それはぜひこの機会を生かしたいものですね。
リフォームもリノベーションも、基本はビフォア(施工前)とアフター(施工後)の違いを「強烈に見せる」ことがポイントになります。
お客さまに「へー、こんなふうになるんだ!」と感心していただく、それが重要です。
そのためには、ビフォアの状態でも多くの写真を撮っておかなければなりません。
特にリノベーションの場合は、プランの変更や2階部分の増築などの大きな改修もあるので、見せ場はたっぷりあります。
言い換えれば「お客さまの知らないリノベーションの世界」が、たくさんあるということです。
それをしっかり見せられるように準備をします。
お客さまのタイプによって施工の内容も違ってきます。
したがって、見学会での見せ方も工夫する必要があります。
「リフォーム」と「リノベーション」の定義づけ
ここでは「リフォーム」と「リノベーション」を次のように定義づけします。
■ リフォーム:新築時の状態に復元・修理すること
■ リノベーション:新築時の状態よりも良い状態に改修すること
例えば水回りの交換を考えてみます。
明らかに今のほうが、30年前に比べ良いものになっています。
しかし、これは設備交換にすぎないので「リフォーム」とします。
一方、耐震・断熱を行い、さらにプランも変更し、安全で省エネ、快適で使いやすくなるように改修するような場合を「リノベーション」としています。
リノベーションを行うお客さまとは?
では最初に、リノベーションを行うのはどういったお客さまなのかを考えます。
お客さまは大きく3つのパターンに分かれます。
1. 親世代(55歳以上)のケース
親世代(55歳以上)がリノベーションまたは大型リフォームをする場合です。
大型リフォームとは、設備機器や内装・外装などを最新のものに交換するイメージです。
費用はかかりますが、構造やプランの変更はありません。
おおむね建物は築年数30年以上、住宅ローンは終了しています。
また何度かの部分リフォームを行っています。
耐震や断熱改修は行っておらず、大型リフォームの範囲で済ませるか、思い切ってリノベーションまで行うか、悩むところです。
ご夫婦2人だけで住むのが前提なので、
・細かなプランよりは、全体的にゆったりした間取りに変える
・ご夫婦それぞれの部屋が用意できる
というところがポイントです。
ちなみに、この世代のお客さまは、支払は基本的に現金です。
2. 親世代と子世代が同居するケース
同居の場合、息子夫婦か娘夫婦か、どちらと同居するかで進め方も大きく変わります。
また、お金を誰が出すかという問題もあり、誰がキーマンかは常に意識しておく必要があります。
とはいえ、最近は子世代が主導するパターンも多くなりました。
息子夫婦の場合、息子つまり子世代のご主人は、リノベーションについてそれほど発言しない傾向があります。
そこで、奥さまつまりお嫁さんがどこまで自分の希望を伝えられるかで、そのリノベーションが成功するかどうかが決まります。
娘夫婦の場合は、その家で育った本人が主導して、リノベーションを進めます。
古いイメージを一気に変えてしまう大胆なリノベーションもよく見かけます。
思わずご両親に「これで大丈夫ですか?」と聞きたくなるぐらいの現場もありました。
3. 新築世代が中古物件を購入してリノベーションをするケース
近年増えているのが、新築世代が中古物件を購入してリノベーションをするケースです。
リノベーションの程度にもよりますが、土地・建物の新築想定金額より最終的に20%程度は安くないと、中古物件にした意味がなくなります。
ですから、いかに限られた予算内に納める提案ができるかが、工務店の腕の見せどころとなりそうです。
このように、誰が住むかで大きく3つのパターンに分けられます。
リノベーションのお客さまは依頼先を探している
リノベーションを希望しているお客さまはものすごく多いのですが、依頼先が見つからず困っています。
全国展開の○○そっくりさん、全国チェーンの大手リフォーム屋さんにも相談に行きます。
しかし、予算が合わなかったり雰囲気が違うということで、なかなか決定に至りません。
お客さまに対して情報発信を
お客さまは、地元の工務店にも相談したいと考えています。
ところが、そもそも工務店の敷居が高いうえに、「リノベーションを行っている」会社にたどり着くことができません。
それは、工務店側が
・リノベーションに関する情報をあまり発信していない
・リノベーションの実績写真をほとんど掲載していない
といった理由があると思われます。
したがって、こまめに情報発信をしていくことで、確実にお客さまは来てくれます。
見学会についても早めに計画し、ホームページなどで発信しましょう。
リノベーションを受注するためのポイント
受注するためのポイントの一つは、見積の早さです。
よくあるリノベ見積のケース
リノベーションの規模にもよりますが、多くは2,000万円前後ではないでしょうか。
この規模の見積を作る場合、工務店としては、まず各業者さんに既存の家を見に行ってもらい、それぞれの見積を取ります。
そして、最終的に工務店でまとめてお客さまに提案する、という流れが多いと思います。
2,000万円クラスだと、お客さまに見積を提示するまでに、1か月かそれ以上かかることもあります。しかも積み上げ方式だと、金額もかなりの額になってしまいます。
~お客さまは不安~
このような見積方法は、お客さまからはどう思われるでしょうか。
バラバラと色々な業者さんが自宅を訪れ、その度に床下や屋根、外回りなどを観察され、家の周りをウロウロされるわけです。
これだけでも、お客さまはかなり不安になるものです。
そして1か月以上も待たされ、ようやく出てきた見積が自分たちの予算をはるかに超えていたとなれば、一気に冷めてしまいます。
リノベの提案はスピードが命
リノベーションの受注で大切なのは「スピード」です。
それには坪単価方式の見積もひとつの方法です。
どんなリノベーションでも坪単価で行うので、ご要望を伺ったら、見積はあっという間にできます。
遅くとも、ビフォア・アフターのプランや仕上・見積を、現場調査から1週間以内に出すことがポイントになります。
これは少し時間をかけて仕組みを作る必要があります。
ぜひ、今後はこの仕組みづくりも考えてはいかがでしょうか。
次回は、リノベ見学会のポイントについて見ていきます。
第106回に続きます。
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