今の賃金制度は業績の良かった時に作ったもので、スタッフにかなり還元する仕組みになっています。
昨年までは問題なかったのですが、業績が悪くなり原資が足りません。
スタッフに工務店の経営について話をしていますが、理解してくれません。結局、制度を盾に賃金を要求してきます。
社労士さんに相談しましたが「日本の労働法は従業員の味方で中小企業の社長は大変なんです」としか言ってくれません。弁護士さんに相談すると「それは社労士さんの方が詳しいから」と逃げられてしまいます。
このまま給与を支払っていたら、3か月で倒産しかねません。
どうしたら良いでしょうか?
(工務店・近畿地方)
まずは、ご相談ありがとうございます。
会社の資金繰りについて誰かに相談するのは勇気がいるものです。
行動できる社長さんはなんとかなりますので、自信を持ってください。
さて、かなりデリケートな内容のお問い合わせです。
このようなご相談は多くお受けしていますが、それぞれの会社により状況は千差万別です。
本来は、実情を正確に把握してから対策をする必要があります。
安易な対応が逆効果となるケースもあるためです。
また場合によっては、銀行交渉や法的手続きが必要になることもあります。
御社の細かな事情が分かりませんので、まずは一般的なお答えをさせていただきます。
ここからは、あくまでも参考程度にお読みください。
スタッフの理解を得るために社長が行うこと
スタッフの理解を得るために社長がすることは、主に以下の2点です。
(2)会社の状況をスタッフに詳しく説明する
順にご説明します。
(1)就業規則や賃金規則を再確認する
まず社長に理解していただきたいこと。
それは、普段は家族的で和気あいあいとしていても、「スタッフ(従業員)は経営者ではない」ということです。
いくら社長がスタッフに考え方を伝えても、彼らにも生活があるので「理解はするが、それでは困る」となりやすいのです。
社内制度で対応できるか検討する
そのうえで、就業規則や賃金制度を丁寧に再確認しましょう。
社内制度や規則は社労士さん任せにしていて、ほとんど目を通していないという社長もいらっしゃいます。
あらためて自社の規則をよく確認してください。社労士さんからの説明を聞くことも大事です。
中には、業績が悪化したときの付則などがついている場合もあります。
まずは「現行制度の中で、会社として何ができるか」を検討します。
(2)会社の状況をスタッフに詳しく説明する
業績が悪化している場合、スタッフもなんとなく気配を感じているものです。
しかし、会社が正しい情報を出していないと、「何とかなるだろう」と楽観的に考えているスタッフがいます。
かと思えば、業者さんに「なんだか、うちの会社調子悪いらしいんだ」などとぼやく監督もいます。
これでは悪い噂を広めてくれと言わんばかりです。
リスク管理が必要
スタッフからこういった不用意な発言が出ないようにしておくのが「企業のリスク管理」と呼ばれるものです。
しかし工務店のような中小企業では、一般的にリスク管理はほとんど行われていません。
ですから、状況が悪いときほど、スタッフに対しても気を配っておく必要があります。
説明会で社内をまとめる
そこで、スタッフ全員(もちろん社員だけです)に向けた説明会を実施します。
この説明会の目的は、あくまでも「今はちょっときついけど、みんなで頑張って、半年後には良い会社にしよう」という、いわば「ワンチーム宣言」をすることです。
暗い話ばかりにならないように、説明内容をしっかりと準備します。
説明会の進め方
では、その説明会をどのように進めるか、大まかな流れをご紹介します。
1. 説明会の冒頭
極めて重要な話なので、「絶対に誰にも口外してはいけない」「他言無用」であることを周知徹底しておきます。
「奥さんや家族、もちろん業者さんにも秘密である」と、しっかり伝えてください。
万一悪い情報が漏れると、その話に尾ひれがつき、噂はあっという間に広がります。
地方の工務店の場合は、それだけで会社危機になることさえあります。
ですから、ここは本当に徹底してください。一番重要なポイントです。
2. 説明会の開催挨拶
社長から、「なぜこのような場面を設けたか」をしっかりと説明します。
そして、「現在着工中の施主さまやOB客さまに迷惑をかけることは、絶対にあってはならない」旨を強調してください。
会社としての存在価値・経営理念が、ここでものを言います。
3. 具体的な現状報告
現状報告は、社長が行うのが一番です。
しかし、数字の苦手な社長や、社員に対してつい横柄な態度が出てしまう社長の場合は逆効果となります。
心当たりのある方は、顧問の税理士さんや社労士さん、コンサルなどがいれば代弁してもらうほうが良いでしょう。このとき、社長は神妙な面持ちで黙っているようにします。
内容については、月次損益表や受注状況表、資金繰り表などを用意しておき、プロジェクタや大型ディスプレイを使って説明します。
<ゆっくり説明し、理解を深めることが大切>
ここでの注意点は、説明をゆっくりと行うことです。
普段、スタッフはこれらの数値や表を見る機会がないと思います。
どんどん話を進められても、理解できていないときがあります。
ですから、ここは時間をかけて丁寧に説明し、スタッフの理解を得るようにします。
4. 今後の見通しについての説明
「これからはこのようなマーケティング対策を行い、このように受注と売上を挽回したい」といった前向きな話をします。
ここは夢を持たせましょう。そして、その夢を全スタッフで共有するようにしましょう。
5. 当面の対策についての説明
「しかし、このままではあと3か月で資金が不足する、そこでこのような対策をしたい、それにはスタッフの協力が欲しい」といった説明を行う場面です。
対策の内容に関しては、特に丁寧な準備が必要になります。
<具体的な対策はご相談を>
なお、具体的にどのような対策を取るかについては、融資や借入の状況、スタッフの人数など様々な要素が関係してくるため、会社ごとに対応が大きく違ってきます。
これは一概にはお答えできませんので、弊社まで詳しい状況をお知らせください。
御社に最適な対応策を一緒に考えましょう。
→無料経営相談 特設ページをご利用ください。
6. 質疑応答
スタッフからの質疑応答の時間を設けます。
これは社長が誠意をもって応えることが一番です。
かなり厳しい意見や質問が飛び出すときもあります。
その場で返事ができない場合は、検討して2~3日中に回答する、ということでも良いと思います。
7. 説明会の最後に
社長から「こうなった責任はあくまでも代表者である自分自身にある」「ぜひスタッフの皆さんの協力をお願いしたい」という話をすることが大切です。
この一言で、スタッフは「大変だけど社長についていこう」と気持ちが固まるものです。
逆に、ここで社長が自己保身や責任逃れのような話をすると、本当にスタッフが集団退社してしまう場合があります。
くれぐれも注意してください。
以上、説明会の流れをざっとご紹介しました。
いつでもご相談お受けします
この説明会の流れは、あくまでも標準的なものです。
会社ごとに状況は違いますので、慎重に準備をして臨んでください。
またお困りのことがありましたら、いつでもご相談お待ちしています。
この記事に関するご質問・ご感想・お問い合わせは【工務店経営の専門家・ジクージン】まで、お気軽にお送りください。