工務店経営のヒントが届く! 無料メルマガはこちら >

【021】工務店の粗利率。本当はどのくらいが適正でしょうか?

Q粗利はどのくらい確保すべきでしょうか?
うちは18%くらいなのですが、経営は厳しい状態です。
私はこれ以上の利益率はまずいと思います。
本当は粗利率はどの程度までだったら良いのでしょうか?
(工務店・44歳・静岡)

Aはい、これは案外よくいただく質問です。
それだけ「粗利益率」を気にされている社長さんが多いということですね。

よくある工務店社長さんとの会話

適正な粗利益率

私「では伺います。20%ならどうですか?」
社長「良いと思います」

私「では、25%では?」
社長「う~ん、ちょっと儲けすぎかな」

私「そうですか。では、30%では?」
社長「絶対まずいです」

私「なぜですか?」
社長「そりゃ、儲けすぎでしょう。施主さまに申し訳ない」

今までに何度か、こんな会話をしたことがあります。

25%は良くて、30%ではダメ。
その線引きはどこから来ているのでしょうか?

この傾向は、真面目な2代目社長さんや職人型の社長さんに多いような気がします。
「儲けすぎてはいけない」と、誰かに刷り込まれたのでしょうか。
しかもかなり歪んだカタチで…。

まずは自社の状態を見極めて

「じゃあ、結局、何%なら良いのですか?」
というご質問には、「取れるなら、取れるだけ取ってください」と、お答えしています。

それは、工務店さんごとに全く事情が異なるからです。

例えば「スタッフ7人で年商5億」の工務店さんと、「スタッフ15人で年商5億」の工務店さんがあるとします。

当然、「スタッフ15人」のほうが、粗利は多く必要ですね。
一方、「スタッフ7人」のほうは、粗利が少なくても余裕かもしれません。

つまり、いかに効率よく経営ができているか、で違ってくるのです。

儲けが少なくカツカツでいつ倒れるか分からないよりは、会社が永続したほうがずっと良いのですから、多いに越したことはないわけです。


なお、想定より粗利が少ないときは、計算方法が違っているケースも考えられます。
詳しくは第43回で取り上げていますので、念のため確認されることをおすすめします。

売上と利益

自社に必要な「粗利額」とは?

具体的に、もう少し詳しく見てみましょう。

そもそも「粗利益」とは、売上高から原価(外注費や材料費など現場に関わる経費)を引いたものです。
この粗利益で、役員や社員の人件費、広告宣伝費や水道光熱費、家賃やリース料などの固定費を賄うわけです。
(粗利益から、これらの経費を引いたものが「営業利益」となります。)

つまり最低限、この「年間にかかる固定費を賄える」だけの粗利益額を稼ぐ必要があるのです。そうでないと経営が成り立ちません。

最低限必要な「売上高」を計算してみる

では仮に、自社の固定費が年間5,000万円かかっているとします。

粗利益率20%の場合

粗利益率を20%とすると、最低限必要な売上高は、
5,000万円 ÷ 20% = 2億5,000万円

粗利益率25%の場合

同様に、粗利益率が25%なら、
5,000万円 ÷ 25% = 2億円
となります。

つまり、「自社の年間にかかる固定費」と「粗利を何%にするか」で、「自社に最低限必要な売上高」が決まります。
この自社に最低限必要な売上高を「損益分岐点売上高」といいます。

この例では固定費を5,000万円と仮定しましたが、御社の固定費を当てはめて計算してみてください。

粗利の最低ラインの目安

これは一般論ですが、最低ラインは一応あります。
スタッフが5人以上、年商4億以上であれば、最低22~23%は欲しいところです。

粗利益率が下がるとどうなる?

仮に年商4億として、粗利益率22%の場合と18%の場合、どうなるか比べてみましょう。

22%の場合

4億円 × 22% = 8,800万円(粗利額)
固定費がこの数字より下であれば、営業利益が残ることになります。

18%の場合

4億円 × 18% = 7,200万円(粗利額)
22%の場合に比べ、1,600万円も粗利が少なくなります。かなり厳しいと思います。

年間棟数が多い場合は別の考え方もありますが…

数をものすごく多くこなしている(=売上が多い)なら10%台でもいい、という考え方もできます。
しかし、工務店業の場合、数を増やせばどうしても人手が必要になり、固定費が増えますから、なかなか難しいですね。

他の業種、例えば製造業は、一度型を作ってしまえば大量生産でき、売れば儲かります。
その点、建設業は一品料理ですから、そうはいかないのが悩ましいところです。

たくさん利益が残ると何ができるか?

先ほどの損益分岐点売上高は、「この売上高以上なら利益が残る」という額です。
つまりカツカツの数字になります

ですから、少し余裕を持った経営をするためには、売上高をさらに伸ばすか、粗利益率を上げる必要があります。

たくさん利益が残ると、次のようなことができます。
・ボーナスなど社員に還元することができる
・仕事環境の改善が可能
・集客のための広告宣伝を増やせる
・人材募集や育成に力を入れることができる

このように「売上高を伸ばし粗利益率を増やす」ことが、より「会社経営を発展させる」ことにつながるのです。

施主さまに喜ばれる仕事を

商売において、「儲けすぎてはいけない」ということは全くありません。

そもそも、商売の本質は何だと思われますか?

それは「いかに顧客に価値を認めてもらい、結果として利益を上げるか」でしょう。

利益を上げれば、税金を払い、社会に還元する。
さらに雇用を創出する、つまり地域に貢献する。
という、素晴らしいサイクルができるのです。

好業績の工務店さんは、利益率が高いのは当然です。
ではその工務店さんは、いい加減な家を建てて法外な価格で販売しているのでしょうか。

実際は違いますよね。

「施主さまに喜ばれる付加価値を提供している」から、利益が出る
このことを理解されているので、儲かっているのです。

ちなみに、儲けが出ない工務店さんは、いずれどこかで破綻してしまいます。
その時、誰が一番困るのか。
言うまでもなく、施主さまです。

商売に「儲けすぎ」はありません
これを頭に置いて、ぜひ世の中に貢献してください。


なお、私どもでは「粗利益」よりも「限界利益」で考えることをおすすめしています。
限界利益や損益分岐点売上高については第112回から連載していますのでご参照ください。

売上と利益
無料セミナー「いまのうちに備える!工務店の資金計画」お申込受付中!
工務店セミナーのお知らせ
工務店にとって厳しい時代になっています。
工務店経営の難しさは「資金の流れが読みにくい」こと。
だからこそ “困ってから考える” のではなく、 “困る前に準備する” ことが大切です。

まずは自社の資金の状態を見直すことから始めましょう。
無料セミナーでは、60分で工務店の経営改善のヒントが得られます。
一度、聞いておきませんか?

この記事に関するご質問・ご感想・お問い合わせは【工務店経営の専門家・ジクージン】まで、お気軽にお送りください。


いい家を建て、利益も残す工務店300の方法
読者会員登録


メール会員
読者会員さまに、工務店経営に役立つ情報をメールでお知らせします。

セミナーや勉強会・交流会のご案内も優先的に届きます。
オリジナル資料のダウンロードもできます。
時々おまけもついてます。

年会費は無料です。登録しておきませんか?


ABOUT US
間瀬 隆司
工務店経営の専門家。集客・営業、人材教育・組織づくり、経営計画、資金繰りを含めた「全ての面倒をみる」スタイルのコンサルティングで、工務店さんを支え続けて30年。工務店のほぼすべてを知り尽くしており、駆け込み寺的な役割を果たしています。神奈川県横浜市在住。海を見るとホッとします。
→詳しいプロフィールはこちら