「家は買うものではない、建てるものだ」という信条をずっと守ってきました。もちろん下請けはしません。
しかし最近紹介数が減っており、どうしたものかと考えています。
(工務店・社長63歳・職人含む社員12名・和歌山)
そうですね。このタイプの工務店さんは地方に多くあります。一方、都市部ではほとんど見かけません。
数年前から、私どもにも同様の工務店さんからのご相談が増えています。
どう対策していくか、じっくり考えていきましょう。
工務店2つのタイプ別の特徴
工務店には2つのタイプがあると考えています。
「営業型工務店」と「職人型工務店」です。
営業型工務店
自社には大工さんや左官さんなどの職人を抱えず、営業と設計・工事管理を行い、工事は外注に出します。
SNSで集客したり、見学会を開いたりして、お客さまを掘り起こしていくタイプです。
職人型工務店
こちらは、社長も従業員もほとんどが職人です。社長自身も大工さんで、昔ながらの棟梁タイプ。
お客さまはその地域で「家を建てるなら○○工務店さんだ」と、親から子へ受け継がれています。地域のつながりもあり、紹介100%です。
職人型工務店への紹介が減っている理由
そもそも住宅市場は、
・新築世代の減少により、市場縮小が続いている
・住宅価格の上昇で、手が出にくい
・実質賃金の減少で、若い家族が家を建てる余裕がない
という厳しい状況にあります。
それに加えて、ほぼ紹介で仕事を請けている工務店とその地域では、環境が変化しています。
工務店周辺環境の変化とは?
■ 核家族化が進み、家づくりを親世代から子世代に継承するパターンが減っている
■ 地域コミュニティの希薄化により、近隣住民同士での工務店情報交換が減っている
■ 同じ地域の新築希望者も、紹介ではなく、自分の意思でネット上の評判、施工事例、アフターなどの情報を集めるようになった
このような状況から、従来の紹介がなくなりつつあります。
世の中の流れが大きく変化していることは、ご理解いただけると思います。
問題は何かを整理し、解決策を考える
では、どうすれば良いのかを考えていきましょう。
1.自社の「強み」と「弱み」を俯瞰してみる
強みを見直す
まず、自社の「強み」を整理してみましょう。
普段あまり意識していないかもしれませんが、御社には多くの強みがあるはずです。
例えば、
■ 自社の大工が責任を持って最後まで建てる
■ 図面通りにいかない現場でも、臨機応変に対応できる施工力がある
■ 大工、左官など主要な工事は自社で対応ができる
■ 過去の建築実績は○○○棟以上である
■ 紹介者は自信をもって弊社を紹介してくれる
■ 地元で何十年もやってきた信頼感がある
などなど。
弱みを把握する
一方で、「弱み」も冷静に考えてみましょう。
■ 紹介のネットワークが細くなってきた
■ ローンの打合せは、銀行やFPに依頼しており自社ではしていない
■ お客さまに提示できる実績写真集やホームページでの情報を、あまり用意していない
などです。
改めて自社の現状を見直してみると、いろいろなことに気づくと思います。
2.自社の問題は何なのか?
強みや弱みが分かったところで、あらためて「問題が何か」を整理します。
■ 社長の信念が間違っているのではなく、「伝える方法」が昔のままで止まっていること
■ 自分の技術が、家を建てたい人に届く「ネットワーク」が弱くなっていること
まとめると、
「永年蓄積してきた『会社の施工力や技術』という強みが、欲しい人に伝わる流れがないこと」
が問題と考えられます。
問題を放っておくと何が起きる?
そして、この問題が続くと、好ましくない事態も想定されます。
絶対に避けなければいけないことは、
社員やその家族、施主さまが直接的に困り、永年培った技術やノウハウが雲散霧消してしまう
ことです。
3.解決するために、社長は何をするべきか
そのまま今の状態を継続し、お客さまの紹介を待っていても、状況は変わりません。
ですから、「何かを変える」必要があります。
社長が変えること・変えないことを書き出す
まず、「絶対に変えてはいけないこと」を社長自身で決めておきます。
例えば、次のようなことです。
◎ 仕事や技術に対する誇り
◎ 決して手を抜かない施工
◎ 安心して紹介してもらえるだけの誠実さ
そして「変えなければいけないこと」も決めます。
◎ 紹介だけに頼らない仕組みをつくる
◎ 分かりやすい説明ができる資料や環境づくり
◎ 施工力や技術力がある職人集団であることを発信する
などです。
俯瞰できるように、紙やホワイトボードに書き出してみましょう。
行動を少しずつ変える
方向性が決まったら、
(2)それを社員や外部の人(ホームページ会社、デザイナーなど)に渡せるようにする
(3)「誰が」「何を」「どこまで」やるかを決めて、社長は判断だけをする
というように、会社の流れを少し変えていきます。
そして実行に移します。
つまり、「信念は変えずに、行動を変える」のです。
とはいえ、変化に対しては、社長だけでなく、社員や取引先も戸惑うこともあります。
あわてずに、ゆっくり確実に進めていくことが肝要です。
おわりに:社員や施主さまのことを考えて
職人気質(しょくにんかたぎ)、信念を曲げない、頑固者、人の言うことを聞かない…
いいじゃないですか!
でも、社員や施主さまを困らせることだけは絶対に避けなければなりません。
今までのやり方がうまく行かなくなったら、信念は変えずに行動を変えましょう。
そうすると「うちの会社、前より良くなったなあ」と感じる日が、割とすぐにやってきます。
職人さんを抱えている工務店は強いです。
ここまで長年やってこられたのですから、まずは一つずつ実行してみましょう。
営業活動での注意点
受注が減ってくると、突然営業マンを雇う工務店を見かけます。
これはほぼうまく行かないのでやめましょう。特に「ハウスメーカーにいました」という40歳以上の人材採用はよく考えることをおすすめします。
詳しくは第51回の記事でご紹介していますので参考にしてください。
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